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朝一でキュアを病院に連れて行きました。少し前に戻ってきましたが、キュアはいません。 ウチに帰ってくる可能性は、高く見積もっても30%あるかないか…… 日常の世話は出来ても、こういうときに何も出来ない無力さが悔しく思えます。 あまりいい話ではありませんが、自分の中に溜めておくには大きいことなので、楽にさせてもらうために書かせてもらうことにしました。
朝起きたら、最初にすることはマロンとキュアにご飯をあげることなのですが、いつもならケージを開けると反応するはずのキュアが、今朝は少しモソモソ動いただけで大した反応を見せませんでした。
僕もそうウサギに詳しいわけではありませんが、さすがに普段とは露骨に違う様子を見れば気付きます。何より、手を伸ばしてみたらおとなしく撫でられています。 完全リラックス状態でも、5〜6回撫でたら終わりというキュアがジッとしてされるがまま……少し呼吸も荒そうに見えるし、いくら何でも変です。すぐに近所の病院に電話しましたが、留守電になっていて繋がりません。
通話を切った携帯に表示されていた時間は、7時32分。 早めに家を出て病院で待つのも手だろうけど、あまりにも早く着きすぎても待っている間キュアに負担をかけるだけです。移動時間を考えて9時少し前に着くように家を出たとしても、40〜50分は待ってから家を出る必要があります。 応対に出てくれた方に、早めに先生が来てくれたらすぐに携帯に連絡をもらえるようにお願いした後、もう一度キュアの様子を確認してゾッとしました。
(食べてない!?)
普段なら朝ご飯の時間までにペレットは食べきっているし、牧草もそれなりに減っています。それが、量を測ってみたら昨晩与えたときと同じ量でした。慌てて好物のドライフルーツをあげてみたものの、どれも少し匂いを嗅ぐ素振りを見せるだけ。 砕いて水で溶いたペレットもダメ。
(おかしい! 絶対おかしい!)
キュアはガツガツ食べるタイプではなく、時間をかけて少しずつ食べます。なので、いつ見ても食っちゃ寝食っちゃ寝しているように見えるのですが……
(まだかよ!)
驚かせるわけにはいかないので声には出さなかったものの、携帯を手に何度も時間と着信記録を確認。電話が来るのが早いか、時間が来るのが早いか……少しでも早く電話が来て欲しいと祈りながら、色々な物を試してみましたが食べたがりません。唯一、すり下ろしたリンゴだけは食べようとするので、シリンジで少しずつ与えたら舐めてくれました。
感覚的には何時間も待った気がしましたが、実際には20分程度待ったところで電話が来て、先生に電話で伝えられる限りのことを伝えました。
「すぐに連れてきてください。焦っちゃダメですよ? 負担をかけないよう、静かに急いで、を忘れないでくださいね」
初外出が病院だなんて……と思いもしましたが、とにかく負担を与えないようにタクシーで病院へ。
「歯には問題がなかったので、レントゲンを撮ってみましょう」
先生に言われて、とにかく原因がわかるならとお願いしたところ、胃にたくさんの異物が入っていました。腸の方にもほんの僅かですが同じような影が見られました。
「この量だと、かなりたくさん囓ったものがあったはずなんですが……」
先生に言われても、囓りまくってすぐにどけてしまうというマロンの前例があって木のすのこは使っていないし、木の家も囓った跡はなかったし……昨日から遡って色々考えたところ、一つ思い当たる部分がありました。
「多分、ダンボールのクズだと思います」
実は、キュアはウチに来る前に路上に捨てられていた子です。 その時入れられていたのがダンボールの箱で、確かに中はボロボロでした。ペレットや牧草はおろか、野菜もなく、水すら入っていない空っぽのダンボールの中で、食べようとしたのか、囓り木の代わりだったのか……おそらく他に囓るものもなかったんでしょう。そのことを話すと、先生も驚いていました。
すぐにでも取り除かないと危険な状態であることに変わりはありません。似たような症状の毛球症なら腸の動きを活発にする薬で排出させることも出来るそうですが、レントゲンだけでは個々のダンボールクズの大きさまではわかりません。 こうなると、もし大きいものを出そうとした場合に完全に腸が詰まる可能性もあります。十分に成長した子であっても危険なのに、まだ小さいキュアにとっては、それだけで死に直結する可能性もあるそうです。 この状態で腸が詰まらなかったのは奇跡的なことで、いつ命に関わる状態になってもおかしくなかったと、先生も驚いていました。
自然に捨てられたウサギが発生することはありません。人間が捨てたからです。保護したときも今日も、捨てた人に対して怒りを覚えましたが、今はキュアを助けることが第一です。
「せめて、もう少し大きくなってくれた子だったら今すぐ手術も出来るんですが……この子はまだ小さいので、仮に手術を乗り切ったとしても麻酔から覚める力が残っているかどうか……」
先生の言葉が、どこか他人事のようで……正直、ただの言葉として聞いていました。意味をちゃんと理解するのに、普段では考えられないほどの時間を使いました。
「助けられないんですか?」
生後二ヶ月の子ウサギが、この状態で何日も生きていた時点で奇跡。素人の僕ではなく、専門の獣医さんにそう言わせたのだから、よほどのことだと思います。 奇跡を起こしたキュアの力を信じて腸の動きを活発にする薬で様子を見るか、手術をするか……
色々話を聞いて、手術を選ぶことにしました。確かに麻酔のリスクは怖いのですが、今週末には引っ越しが控えていることもあり、今の状態で住む場所が変わったことで食欲不振等になった場合、どうなるかわからないというのがあります。幸い、術後も回復まで入院させてくれるとのこと。これなら、手術さえ乗り切ってくれれば……
とりあえず、食べていない今の状態では困るので、今日は入院して投薬で様子を見つつ、点滴で少しでも体力を回復させて明日手術することとなりました。
明日は仕事なので携帯に連絡をもらえるようお願いして帰宅。十日前には当たり前の風景だった、マロンだけのスペースが酷く寂しく見えました。
キュアはダンボールに入って捨てられていたと書きましたが、僕が見つけたときはおそらく兄弟だと思われる子と二羽で入っていました。急いで獣医さんに連れて行ったのですが、結局一羽は病院で亡くなってしまい、キュアも衰弱していましたが、栄養剤の投与を経てウチに来たという経緯があります。ウチに来てからもペレットには毎日栄養剤をかけて食べていたし、僕もキュアが本調子だと確信する姿を見たことはありません。
「本当なら今すぐ手術するべきですが、この体力では出来ません」
先生の言葉が未だに聞こえてます。 本来なら飼い主に不安を与えるようなことは言わずに、出来る限り安心させるのが獣医さんの基本らしいのですが、今の状態をちゃんと知りたいからとお願いしたところ、
「明日までに手術に耐える体力が戻ればいいのですが、最悪の場合も考えておいてください」
とのことでした。 一緒にいた子の分、二羽分の命を持って生きているから、獣医さんに奇跡と言わせるだけのことをして今日まで生きて来れたのではないかと思います。もちろん、現実的にはそんなことありえないとわかってはいるけど……それでも、どんなに非現実的なことでも何か前向きな考えのよりどころが欲しいので、今はそう考えるようにしています。
まだロクに慣れてもいなくて、撫でることすら機嫌のいいときにほんの少しだけという子ですが、このまま慣れてくれなくても、元気にさえなってくれれば十分です。 助けてあげられず、名前すらない状態で亡くなった子の姿が思い出されて辛くはありますが…… キュアはキミの分まで生きてくれるはずだから……お願いします。もう一回だけキュアに奇跡を起こす力をください。 ウチに来てから、まだ十日。これからもっと広い個別のサークルで好きなだけ遊べる環境に引っ越せるというのに……このまま帰ってこなかったら許しません。 |
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本来の予定から一日半遅れましたが、キュアは手術可能と判断されるところまで体力を取り戻してくれて、胃の手術を受けました。腸にも若干ダンボールクズはありましたが、
・自然排出が余裕を持って可能だと思われる範囲 ・胃と腸の切開手術は、いくら何でも度を超えて危険
という二点の理由で胃の中身のみを取り除きました。実際、胃だけで全体の殆どの量が取り除けました。 術前に最終確認と言うことで面会しましたが、いくら体力が戻ってきたとは言え、元気というか、本調子でないのは明らかでした。寝そべったままだった前回に比べれば、普通に座っている分だけ元気になったようには見えます。でも、相変わらず撫でても嫌がりもしないし、ウチで見せていた、いたずら好きの目でもありません。
「体力の取り戻し方を見た感じ、それだけを考えればもう一日待つと、生存率は上がると思います」
だったら、あと一日。そう思いましたが、その後の話を聞いてどうにもならないところまで来ていると思い知らされました。
体力だけなら、と言った裏には、体力が付いて元気になる=胃腸の動きも少しずつ強くなる、ということが考えられるとのこと。体力的には待つという選択がベストなのに、待った分だけキュアは危険な状態になってしまう…… 入院以来ずっと様子を見てくれている先生です。点滴を始め、先生の処置がなければここまで来ることはなかったはずです。
・安全かどうかは、約束できない。 ・ただ、このまま待って万が一体力が落ちたら、二度と手術はできず、その可能性は十分ありえる。 ・時間が経つほど何が起こるかわからない。これ以上引き延ばすよりは、今のタイミングがベスト。
まだ術前だというのに、頭まで下げて隠さず本当のことを話してくれた先生に、全部任せることに決めました。
「お願いします」
出来れば言いたくなかったけど、それだけ言って承諾書にサインしました。 平日だったからなのか、たまたまだったのか、待合室には他の患者さんはいませんでした。ここに患者さんがいるということは、苦しんでいる子がいるということです。無人で良かった、なんて変なことを考えながら待っていました。
術後すぐに、先生から説明を受けました。手術その物は成功したこと。 本当に大変なのはここからで、少しでも早く麻酔から覚めなくては危険だということ。 取り出した物も見ました。ドロドロになってそれぞれがくっついて、少し乾き始めていたただの紙クズ……こんなものにキュアの命を奪われたかと思うと悔しさで一杯でした。 その後、とにかく今回のようなことを二度と繰り返したくはないので、術後の注意点をメモして、ちょっとでもわからないところは細かく聞いていたら、麻酔担当の先生が呼びに来てくれました。
「まだ麻酔が抜け切っていないので、ボーッとしている状態だと思ってください。ビックリしないように、静かに話しかけてあげてください」
通された処置室で、横になった状態でキュアが待っていました。お腹の毛が一部なくなったこと以外、見た目は手術前と殆ど変わらなかったと思います。若干痩せた感じもしましたが、胃の中のものがなくなったせいでしょう。お腹も動いていました。
「……キュア?」
頑張ったね、とか、色々言えることはあったはずなのに、名前を呼ぶのが精一杯でした。僕の声には特に反応しませんでしたが、ゆっくりですが鼻が動いていました。目もほんの少しですが開きかけていました。
「目は覚めていますよ」
先生に言われて、ここまで張りつめていたものが切れてしまったようで、その場にへたり込んでました。 手術に耐えて、完全ではないにしても、麻酔からは覚めつつある。 このことが理解できた時点で、一緒に週末の引っ越しは出来ないにしても、術後ちゃんと回復すればまた帰ってくる。入院以来初めて安心していました。 ここまで頑張ってくれたことがとにかく嬉しくて、完全に術後のことと、引っ越し後にどの程度のペースで見舞いに来るかで頭は一杯でした。 再度先生から今後の治療について説明を受けていたとき、一つ思い出したことがありました。
「生の牧草って、術後に食べられますか?」
生のチモシーが期間限定で販売されていたので、それを買ってありました。 しばらくは、ペレットにしろドライフルーツ類にしろ、すり潰して水で溶いたものから始めることになります。キュアは生牧草の味を知らないので、持ってこようと思ったんです。
(部屋に戻って、牧草とノートPCを持ってきて、牧草届けたらブログで報告して……)
これからのことを考えて病院を出た途端、呼び止められました。
「戻ってください!」
全部聞き終わらなくても、表情だけで十分でした。 執刀してくれた先生。僕。 二人の前で、キュアはグッタリとしていました。先生がしばらく様子を見ていましたが、
「手、握ってあげてください」
完全にリラックスしていれば、頭を撫でられるのは平気な子でしたが、偶然僕の手が前足に触れたときにビックリしたことがあります。それが、何の反応もしませんでした。 先生が少し距離を置いた時点で、全てわかりました。
「キィ……」
消え入りそうな、ものすごく小さな声だったけど……でも、確かに聞いたように思えます。この後、手を繋いだまま、キュアは月に帰りました。ゆっくり抱いてみたら、まだ少し温かくて、腕の中で眠っているようにしか見えませんでした。
(抱っこ嫌いでしょ……)
初めて抱かせてくれたのに、ピクリともしなくて……
(嫌がってよ…暴れてよ……)
何もしてくれないキュアを抱いたまま、先生にお礼を言って帰宅しました。せめてもの救いは、きちんと最期を看取ってあげられたことだと思います。確かに、キュアは元気になって帰ってくることは出来ませんでした。応援してくれた皆さんにも、もう一度元気な姿を見せられなかったことは残念です。 でも、命を落とす寸前の身体で、精一杯頑張って全ての山を越えてくれました。麻酔も、手術も、麻酔から目覚めることも。 たくさんの方が応援してくれた声に、何度も先生を驚かせるほどの強い意志と生命力をもって、キュアは必死に応えてくれたんです。入院した日
「このまま帰ってこなかったら許さない」
と言いました。 確かに、この部屋には帰ってきてくれませんでした。でも、キュアは僕のところには帰ってきてくれました。ちゃんと手術まで耐えきって、麻酔の眠りから戻ってきて目を覚ましてくれたんです。 だから、今はキュアを褒めてあげたいと思っています。 出来ないはずのことを何度も繰り返して、僕とマロンの元に帰ってきた小さな命。たった10日だけの家族だったけど、たくさんのものを残してくれました。 |
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10日あまりのキュアとの生活は、ダンボールに入って捨てられていた二羽の子ウサギを見つけたことから始まりました。犬や猫に比べて捨てウサギというのは確かに珍しいとは思いますが、一人で生きていくのが困難な事に変わりはありません。
少し前に、小学校で飼われていたウサギが心ない少年達から虐待を受けて亡くなったという事件がありましたが、人間だけでなく、車などの危険もあります。都市部になればなるほど、アスファルトに固められた地面ばかりで自然の姿は減っていきます。家族として可愛がられて生活している子がいる反面、人間の都合だけで上記のような環境に放り出されてしまう子がいます。
もちろん、社会で生きていく上で、人間が他の動物以上に複雑なシステムの上で生きているのはわかっています。やむにやまれぬ誰にも責められない事情を抱え、仕方なく「手放す」という選択をするしかない場合もあるでしょうし、理想はともかく現実的に考えたら「たとえ何があろうと最後まで共に生きなくてはいけない」とは言いません。人間もペットも、現実の中で生きているのですから。
ですから、手放さざるを得なかったとしても、安易にそのことを責めることは出来ません。でも、その子と一緒にいる生活を手放したとしても、その子の命まで手放さないでください。
事情は様々だと思いますが、何にせよペットを手放さざるをえなくなった方……お願いです。彼らの命を捨てるなんて、やめてください。真剣に考えて手放すしかないのなら、それを責める権利は誰にもないし、恥ずかしい事じゃないはずです。だから、同じように真剣になって、里親さんになってくれる方を探してあげてください。
ペットを捨てるということは、ペットを殺すことと変わらないと思います。 ここを見ているとは思わないし、僕が付けた名前なんて知らなくて当然ですが、それでも言わせてください。
>キュアと、その兄弟を捨てた人 キュアの苦しみをほんの少しでもわからせてやりたい。 あんたが殺した、って言ってやりたい。 同じ目に遭わせて、月でキュアに謝らせたい。
でも、キュアはどんなに辛い目にあっても、生きることを諦めなかったから。 同じ「人」である僕といる生活の場へ戻ろうとしてくれたから。 うぬぼれかも知れないけど、人といることを捨てようとしなかったキュアのために、お願いします。
もう、キュアで最後にしてください。
人も動物も同じだなんて、そんなことは言いません。いくら家族であっても、人間よりはるかに短い寿命を始め、たくさんの違いを持った別の生き物です。 ウサギに限らず、殆どのペットオーナーさん達は、そのことを理解した上で「家族」として可愛がっているのだと思います。違う生き物であっても、同じように命を持っているから「家族」なんです。
仕方ないから。面倒を見きれないから。 その他、理由は何だっていいんです。何らかの理由があってキュア達を捨てた事実は消えません。
同じ理由で、あなたは家族を……親兄弟や自分の子を殺すのですか? |
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